2017-08

Latest Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「新しい人」を育てる教育

 「なんでフリースクールの人たちが教育基本法の改正に反対するの?」とその議員秘書は言った。フリースクールなどに関わる有志の声明文を持って、国会議員事務所をまわった時のこと。
 「教師の管理を厳しくするな、と言うけれど、世の中ではどこの会社だって上の命令を聞いて働いているのよ。子どもたちだってやがて社会に出ていくんじゃないの?」…連日のような抗議のメールとファックスに辟易していた彼女のあまりの勢いに押されたのと、日帰りの東京行きという時間制限で、とにかく声明文を渡すだけで退いた。彼女も元教師で、今の教育現場の問題は、学校の一人ひとりの教師が原因であると思っていると言う。

 大学の時、教えを受けた山住正己・東京都立大学教授(故人)は、ゼミでは学生の興味関心を最大限に尊重して、どんなことをテーマにレポートを書こうと、一切否定した事がない人だった。また、彼が顧問をしているサークルの学生たちが、夏休み中に大学の近所の子どもを相手に開く「夏期学校」の活動のためまるまる大学の校舎一棟を借りていたが、彼は期間中ほとんど顔を出さず、もちろん一切口出しをせず、その責任だけを負って、学生の自主的な活動を保障していた。私もそのサークルに所属して、忘れがたい貴重な経験をした。私の中では、この体験が今に結びついている。
 山住先生は、日の丸・君が代の問題をはじめ教育勅語の成立過程など、戦前の軍国主義教育の研究が専門であったが、芸術と文化をたいへん大事にしておられた。学生・院生たちをバーに連れていってはカラオケを歌い、最後には学生の合唱に自ら割り箸でタクトを振るうようなお茶目な研究者でもあった。彼のもとで育った学生たちは、様々な現場で、新しい教育や文化を作りだす仕事に取り組んでいると、昨年お会いした美津子夫人は嬉しそうに語っておられた。スーツ姿で楽しそうに岩の上に寝そべる自由闊達な写真が、仏壇に飾られていた。

 東京から帰った疲れと、新聞の「いじめ」の報道や東北の沖合にサンマが大量に打ち上げられた異常気象のニュースなどを聞いて暗い気持ちで居間に寝そべっていると、小学校3年になる息子が突然「お父さーん!」と私を呼ぶ。何かと思って風呂を見に行くと、シャンプーを手でこすり合わせ口で吹いてシャボン玉を作って風呂の壁じゅうにシャボン玉をつけて遊んでいるのだ。かと思えば、唐突に「やっぱり頭洗おーっと」と言って洗髪を始めるのには、思わず笑ってしまった。多分彼なりに、落ち込んでいる私を慰めようとしたのだと思う。
 大江健三郎さんの小説でも、光さんがそのユーモアで家族を癒している。ラミ中でも一緒に過ごしている「新しい人」たちが、私に元気を与えてくれる。キャンプなどで関わった子どもたちが、なんとこちらの予想外の楽しいハプニングを起こしてくれることか!

 子どもには、大人が予想もできない突飛な発想や新しいものを創り出すエネルギーがある。その面白さが見たくて、私は今も子どもと関わる仕事に執着しているのだと思う。そして、どう考えても絶望的な地球環境の問題なども、ひょっとしたらこの「新しい人たち」が、私たち大人が思いもよらないような方法で乗り越えていってくれるのではないか、と思えてくる。

 教育がもし、現在ある社会に適応する人間として子どもを育てるためにあるのなら、先ほどの議員秘書の言うこともそのとおりだと思う。しかし、教育は社会適応のためだけにあるのではない。この地球の上で、すべての人類が他のいのちとともに幸せに生きれるような社会、そういうものを新たに創り出していける人間を育てることも、教育の大きな目的ではないか。
 「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」
 現行の教育基本法のこの明るさは、悲惨な体験を乗り越えて新しい社会を創ろうとした決意から来た宣言に他ならない。
 未来への希望を生む教育、それはロボットのように束縛された教師によってではなく、自由で闊達な精神を持つ大人たちとユーモアと創造力にあふれる子どもたちとの共同作業によって生み出されるのだ。片隅にいる私も、そういう大人の一人でありたい。
      (「設立委員会通信№46」2006年12月号より転載)
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://masteron7.blog81.fc2.com/tb.php/11-4a290640

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

さぁ~もうひとふんばり 教基法

明日が参議院の会期末です。そして今日が参議院特別委のXデー(採決日)といわれています。(→HPニュースはこちら)もうひとふんばりです。ひとりひとりが,この問題に関心をもつこと,事態を注視することだけで,と

«  | HOME |  »

プロフィール

マスター

Author:マスター





無料カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。

 

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

 

 

RSSフィード

リンク

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。